こんにちは KCです。
本日は、2011年にシリアで始まった戦争にまつわる絵本の紹介です。悲しい描写もあるので、苦手な方はここでお止めください。

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Nour’s Secret Library
Wafa’ Tarnowska (Author)
Vali Mintzi (Illustrator)
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Nour’s Secret Library
Wafa’ Tarnowska (Author)
Vali Mintzi (Illustrator)
シリアの首都ダマスカスは、香る街として愛されてきた場所です。あんずやさくらんぼの果樹園からは甘い香りが広がり、バラの芳醇な香りが通りを巡っていました。
この町に住むノウル(Nour)の名前は、アラビア語で光(Light)という意味。まんまるなお顔で、いつもキラキラした瞳で明るい彼女に、ぴったりの名前です。
ノウルが、ママとパパの次に大好きなのが、まるでお兄ちゃんのような、いとこのアミル(Amir)です。学校が終わると、木登りをしたり、かくれんぼをしたりして遊びます。中でも2人が大好きなのは、探偵が活躍する本を読むことでした。
「秘密結社ダマスカス7を作ろう」
2人は、町の中でこっそり集まれる場所を探し、誰を仲間に入れるか慎重に考え、招待状を送りました。自分たちだけに通じる秘密の合図も考案しました。そしてついに、最初の秘密の会議を計画していたその日の朝ー。
ノウルは、飛行機が空を旋回する音で目を覚ましました。続いて爆発音が聞こえ、窓が揺れ、がたぴしと音を立てました。お母さんが『戦争がすぐ近くまで来ているんだわ』と窓越しに空を見上げて言いました。お母さんは、これがすぐに終わるものではないと悟っていました。ノウル達30人もの人々が、地下室へ避難することになったのです。
あの美しい香りは街から消え、瓦礫の街と化したダマスカス。電気もなく、食べ物も十分に手に入らず、夜は鳴り響く抗争の音に怯えながら、暗やみでの生活が始まりました。
昼間、銃撃戦が止んでいる隙に、アミルは地下室から這い出て、食料を確保しに行きました。くずれた建物の陰から、アミルは本を拾い上げました。この本で何ができるかは分かりませんでしたが、友達にも頼み、埃まみれの本を集め、分類し始めました。
山積みになった本を見て、ノウルはアミルに耳打ちしました。
『秘密の図書館を作らない?誰もが本を読めるように』

この本を書くにあたり、著者のWafa’ Tarnowskaさんも、幼少期に戦争に巻き込まれ、家族や親戚と地下に隠れて避難生活を強いられた記憶を掘り起こしました。
イラストレーターのVali Mintziwonさんも、長年中東で生活する中で、アートが自身の逃げ場であり、支えであったと言い、平和と戦争の間で多くの作品を生み出してきました。
おふたりの持つその背景が、ノウルの物語における現実味と悲壮感、希望を生々しく、また瑞々しく表現するに至ったのです。
この本は、2022年に、子供絵本の分野においてIndependent Publisher Book Awardを受賞、
翌2023年のNautilus Book Awardの6-9歳向け図書の分野で、金賞を受賞しています。
読んでいると、無力感や絶望で息苦しくなる本です。しかし、何も出来なくとも、『世界の真実を知る』ということが大切です。小学生のうちに一緒に読んであげたい絵本です。