『ちいさいおうち』を取り巻く挿絵が、時間の移ろいを表現。大人気作品!

ビル画像 本のご紹介

こんにちは KCです。本日ご紹介する本は、マサチューセッツ州ニュートン出身のバージニア・リー・バートンさんによる『The Little House』です。1942年に出版され、日本でも石井桃子さんによる翻訳版『ちいさいおうち』(1954年岩波書店)がロングセラーとなっています。翌1943年には、Caldecott Medalを受賞しました。
※その年の アメリカの児童書、絵本の中で最も素晴らしかった挿絵作家に与えられる賞

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The Little House
Virginia Lee Burton

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The Little House
Virginia Lee Burton

ちいさいおうちは、とある田舎の丘の上に建てられました。小さいけれど丈夫で、この家を建てたお父さんは『この家は、お金のために売るなんてことは絶対にせず、僕達の玄孫(やしゃご)のそのまた玄孫も住んでいくんだ』と言いました。
ちいさいおうちは静かに、一日の流れや季節の移ろいを感じながら、子どもたちの成長を眺め、月や星のきらめきを浴びながら、何年も何年も幸せな気持ちで居ました。

ところが、ちいさいおうちのある田舎にまで、大きな道が通り、工事車両がひっきりなしに駆け巡り、ビルが立ち並び、地下鉄が走るようになります。ずっとそこにあったちいさいおうちが、より一層小さく見え、おひさまの光を浴びることも出来ず、頭のてっぺんにだけ、ぽっかりと切り取られたような空があるだけ。
自然の色に彩られていたはずの丘は、汚れた空気で灰色にくすんでしまいました。季節の移ろいも感じられず、月も星も見えなくなりました。そこにちいさいおうちがあることを気に掛ける人もいません。

工事が始まってからというもの、ページをめくるごとにちいさいおうちのある丘がどんどん色を失っていきます。景色だけでなく、ものがたり前半のゆったりとした美しい時の流れさえも変わってしまい、まるで時間に追われ走り続けるしかないような、息苦しさを感じます。

《+αのお楽しみ》
英語版では、The Little HouseのことをSheやHerと呼んでいます。船や建物などを、itとは言わずに、女性のようにshe、herを用いる理由は、名詞に性を持つヨーロッパの言語が英語の元になっているからだと言われています。かの有名なタイタニックも、Sheと呼ばれています。

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